インサイダー取引とは?
Q:質問
インサイダー取引とは?最近、検挙される人が目立つのはなぜ?
A:回答
インサイダー取引とは、上場会社の関係者などが、職務や立場によって知った投資判断に重大な影響を与える未公表の会社情報を利用して、株式などを売買する行為です。
情報を知らない一般の投資家が不利な立場で取引することになり、証券市場の信頼性が損なわれるため、金融商品取引法で禁止されています。
- 決算、業績修正、M&A、TOB、新製品、重大な事故など、株価に影響しそうな情報を、
- 会社関係者や情報を受け取った人が、
- 世間に公表される前に知り、
- その情報をもとに売買する行為が、
- インサイダー取引にあたる可能性があります。
利益が出たかどうかだけで判断されるわけではありません。未公表の重要情報を知った状態で売買したかどうかが問題になりますので、結果として損をしても「セーフ」とは限りません。

最近はインサイダー取引の摘発が目立つように見えますが、数字だけで見ると過去最多というわけではありません。
一方で、注文データの分析、取引所と証券取引等監視委員会の連携、デジタルフォレンジックなどが進んでおり、昔よりも見つかりやすい時代になっていると考えられます。
目次
インサイダー取引がなぜ問題なのか
株式市場は、誰もが同じタイミングで開示情報を見て、自己判断で売買できることを前提に成り立っています。
ところが、一部の人だけが未公表の重要情報を知って売買できると、情報を知らない投資家との間に大きな不公平が生まれます。
インサイダー取引は、特定の人だけが利益を得たり、損失を回避したりできるため、市場の公平性・透明性・信頼性を損なう行為として規制されています。
最近、検挙が目立つように見える理由
2026年6月に公表された証券取引等監視委員会の活動状況では、2025年度の内部者取引に関する課徴金納付命令勧告件数は15件でした。
直近5年では増加傾向に見えますが、過去には2009年度に38件、2016年度に43件の勧告があり、2025年度の15件が過去最多というわけではありません。
| 年度 | 内部者取引の 課徴金勧告件数 |
|---|---|
| 2021年度 | 6件 |
| 2022年度 | 8件 |
| 2023年度 | 13件 |
| 2024年度 | 12件 |
| 2025年度 | 15件 |
最近目立つ理由としては、件数そのものよりも、金融庁職員、東京証券取引所社員、証券会社の投資銀行部門など、市場の信頼を守る側に近い立場の人が関与した事例が報じられていることも大きいです。
つまり、「インサイダー取引が急に増えた」と見るより、昔からあった可能性のある不正が、監視強化によって表に出やすくなったと考える方が自然です。
インサイダー取引はどうやって発見される?
日本取引所自主規制法人では、株式の発行、倒産、合併、決算など、投資判断に重大な影響を与える会社情報が公表された銘柄を対象に、売買動向を日々分析しています。
インサイダー取引と疑われる取引については、証券取引等監視委員会に報告されています。
- 重要事実の公表前に、不自然な買付けや売付けがないか確認される
- 注文データ、売買タイミング、投資者の属性などが分析される
- 他人名義、少額取引、知人・親族経由でも調査対象になり得る
- メール、チャット、SNS、端末履歴などの電子証拠も重要になっている
2025年度の証券取引等監視委員会の取引審査は907件で、そのうち886件が内部者取引に関するものでした。インサイダー取引は、取引審査の中心的なテーマになっています。
また、証券取引等監視委員会はデジタルフォレンジックによるデータの保全・解析・分析業務に必要なツールや情報システムの強化にも取り組んでいます。スマホやパソコンに残る電子的な証拠も、昔より追いやすくなっています。
インサイダー取引違反をするとどうなる?
インサイダー取引規制に違反すると、刑事罰や課徴金の対象になります。
- 刑事罰
- 5年以下の拘禁刑、500万円以下の罰金、またはこれらの併科
- 法人の計算で違反した場合、法人に5億円以下の罰金刑
- インサイダー取引規制違反によって得た財産は、原則として没収または追徴
- 課徴金(行政上の措置)
- 自己の計算でインサイダー取引を行った場合、課徴金納付命令の対象になる
- 課徴金は、実際の利益額そのものではなく、金融商品取引法で定められた計算方法により算定される
- 刑事罰の対象にならない場合でも、行政上の措置として課徴金が命じられる可能性がある
「少額だから大丈夫」「家族名義だから大丈夫」「利益が少ないから問題ない」というものではありません。疑わしい情報を得たときは、売買する前に勤務先や証券会社、専門家へ確認するのが安全です。
村上ファンド事件では、旧証券取引法違反により、懲役2年、執行猶予3年、罰金300万円、追徴金約11億4,900万円とした東京高裁判決が確定しました。
※現在は金融商品取引法で規制されています。当時とは法令名や刑罰の表記が異なります。
会社の内部者情報を得る立場にあるものとは?
インサイダー取引で注意したいのは、上場会社の役員だけが対象ではないことです。
上場会社の役員、社員、契約先、取引先、親会社・子会社の関係者など、未公表の重要情報を知る立場にある人は注意が必要です。
また、会社関係者から未公表の重要事実を聞いた人、いわゆる情報受領者も規制対象となる可能性があります。
たとえば、上場企業に勤める家族や知人から「まだ公表されていない好材料」や「これからTOBがありそう」と聞いて売買した場合、インサイダー取引に該当する可能性があります。
上場会社にご自身や身内がお勤めの場合、インサイダー取引に関しては社内ルールで厳しく管理されていることが多いです。ご自身が内部者にあたるかどうかは、必ずお勤めの企業にご確認ください。
各証券会社では、インサイダー取引を未然に防止するため、口座開設時や登録情報の変更時に、勤務先や内部者情報の登録を求める場合があります。転職や異動、役職変更があった場合は、証券会社の登録情報も見直しておきましょう。
インサイダー取引の具体的な例
具体的な例としては、企業の経営陣や社員が、まだ公表されていない好決算や上方修正を知った上で自社株を購入し、発表後に株価が上がったところで売却するケースがあります。
反対に、下方修正や不祥事などの悪材料を公表前に知り、株価が下がる前に売却して損失を避けるケースも問題になります。
- 未公表の上方修正を知って、発表前に株を買う
- 未公表の下方修正を知って、発表前に株を売る
- TOBやMBOの情報を知って、発表前に対象会社の株を買う
- 知人や家族に未公表情報を伝え、その人に売買させる
- 売買をしなくても、他人に利益を得させる目的で情報を伝えたり、売買を勧めたりする行為が問題になる場合がある
インサイダーのたとえ話
身近なたとえで考えると、インサイダー取引の「ズルさ」が分かりやすいです。
農家で働くおくさまA:「来週から凶作で、お米の値段が3倍に上がるみたいですよ」
それを聞いたおくさまB:「じゃあ、今週中にたくさん買っておかなきゃ」
この時点で、おくさまBは情報を知らない一般の人よりも有利な状況にあります。
まだ値上がりしていないお米を、安いうちに買い占めることができます。
その後、こんなこともできます。
おくさまB:「そうだ!買ったお米を2倍の価格で売ろう」
おくさまBは、大量に仕入れたお米を高く売り、多額の利益を得ました。
メデタシ、メデタシ・・・。
・・
・・・・
・・・・・・とはならないのはお分かり頂けますでしょうか?
一部のズルいは許さない
Bの奥さまにとってはメデタシですが、一般の人から見ればBの奥さまだけ「得」をしていてなおかつ、事前の情報により得た「お米が値上がりする」というのを知っていたため、大量に仕入れたお米を他者に売却し、利益まで得ています。
「Bの奥さまだけズルいなぁ」・・・と感じる方も現れるでしょう。
では、世間に対してニュースなどで「来週からお米の価格が3倍になります」と発表したらどうでしょうか?こちらはみなが同じ情報を同じ時期に入手しますので公平性があります。
株式投資市場でもこの一部の者の「ズルい」をタブーとしており投資家の公平性を保つためにインサイダー取引を禁止しているんです。
知人に上場企業に勤める「会社関係者」の方がいる場合、株価に影響を及ぼすような情報を得て売買をしても、インサイダー取引に該当しますので注意しましょう。
情報をどこからか入手して、「これってインサイダー取引に該当するかな?」と疑問を持った場合には、取引をする前にお勤めの企業に確認をしてください。
インサイダー取引に関する質問
うっかり未公表の情報を聞いてしまった場合は?
その情報が公表されるまで、対象銘柄の売買は控えるのが安全です。勤務先や取引先に関する情報で判断に迷う場合は、会社の管理部門や証券会社、専門家に確認しましょう。
家族や知人名義で売買すればバレない?
他人名義での売買や少額取引でも、取引タイミング、資金の流れ、関係者とのつながりなどから発覚する可能性があります。名義を変えれば大丈夫という考えは危険です。
最近、インサイダー取引が急増しているのですか?
直近では課徴金勧告件数が増えていますが、過去にはもっと多い年度もあります。件数だけで「急増」と断定するより、監視・データ解析・電子証拠の活用が進み、昔よりも見つかりやすくなっている側面が大きいと考えられます。
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